頑張る理由
ミラノ・コルティナオリンピックが先ごろ閉幕しました。今大会でも日本人選手たちはそれぞれの舞台で力を尽くし、私たちに深い感動を残してくれました。その一方で、期待を受けながらも思うような結果に届かなかった選手もいます。女子スピードスケートの吉田雪乃選手も、その一人でした。女子500mで13位という結果に、人知れぬ悔しさを抱えながら観客席へ向き合う姿が報道されています。
しかし、吉田選手がこれまで歩んできた道のりに目を向けると、そこには順位を超えた価値が浮かび上がってくるように感じます。
吉田選手は「スピードスケートが大嫌い」と公言しています。それでも競技を続けてこられた原動力は、支えてくれた人々、とりわけ高校時代の顧問の先生に「恩返しをしたい」という揺るぎない思いでした。五輪代表に決まったときにも、「私は全然うれしくない。先生はうれしいですか?」と尋ねたというエピソードからは、だれかの喜びを力に変えて歩んできた彼女の姿勢が伝わってきます。
人は、好きなことだから頑張れるときがあります。また、将来のために必要だという理由で努力できるときもあります。しかし吉田選手の姿は、だれかのために尽くすという思いが、人を内側から大きく成長させる力となり得ることを示しています。たとえ大嫌いなことであっても、誠実に向き合い続けた時間は、確かな成長として彼女の中に刻まれていきました。
卒業していく皆さん。皆さんがこれから歩む道には、戸惑いや迷いが生まれる瞬間が必ずあります。努力しても形にならないと感じる日もあるでしょう。そんなときこそ、「なぜ自分はこの道を進むのか」と、静かに自分自身へ問いかけてみてください。大きな理由でなくて構いません。自分のためでも、だれかのためでも、ほんの小さな願いでもいい。その理由が、次の一歩を支える力になります。頑張る理由は、それぞれにあっていいのです。
大切なのは、理由の大きさではなく、歩み続ける姿勢です。今日の一歩は、きっと明日のあなたを支え、未来のあなたを強くしていきます。揺るぎない軸とは、華々しい成功ではなく、日々の地道な積み重ねの中でこそ育まれるものです。
卒業生の皆さん。どうかこれまで積み重ねてきた自分自身を信じ、確かな足取りで新しい世界へ踏み出してください。皆さんの門出が希望と成長に満ちたものであることを、心から祈っています。