心を前に向ける ~ 受験生の皆さんへ
弓道に「残心(ざんしん)」という言葉があります。矢を放った瞬間にすべてが終わるわけではなく、矢が的に届き、その結果を見届けるまで心を弛めない姿勢を指します。動作は終わっても、心はなお、前を向き続けている——そこに本当の力が宿るとされます。
この「残心」の考え方は、試練に向き合う私たちの姿勢にも重なるものがあります。
受験生の皆さんは、これまで長い時間をかけて学びを積み重ねてきました。うまくいかない日や、不安・焦りに揺れた瞬間もあったことでしょう。それでも今日という日を迎えているという事実は、皆さんが歩みを止めず、一歩ずつ前へ進んできた証しです。
試験が近づくと、人はどうしても「結果」を意識しがちです。しかし、結果とは直接つかみに行くものではありません。目の前の一問、今この瞬間にできることへ丁寧に向き合った、その積み重ねの先に静かに現れるものです。的を意識しすぎればかえって矢が乱れる——弓道の教えは、そのことを示しています。
大切なのは、これまで積み上げてきた自分自身を疑わないこと。不安を覚えるのは真剣に努力してきたからであり、その不安は弱さではなく、むしろ努力の裏返しです。
そして、受験は決して一人の営みではありません。支えてくれた家族、励まし合ってきた仲間、成長を願い続けてくれた多くの人の存在が、今も皆さんの背中をそっと押しています。試験当日は一人で机に向かいますが、そこに至るまでの道のりは、温かい支えに満ちていたはずです。
受験生の皆さん。どうか最後の瞬間まで心を前に向け続けてください。「終わり」を意識するのではなく、「今この一矢」に集中すること。その姿勢こそが、皆さんの力を最もよく引き出します。
皆さんが歩んできた道のりには、確かな意味と価値があります。自分を信じ、静かな残心をもって本番に臨んでください。
皆さんの健闘を、心より祈っています。