「啐啄の機」No.51(2025年11月1日)

2025.11.01

読書は心を育てる営み ~ 読書週間に寄せて 
 
秋もすっかり深まり、校内の木々が色づき始めました。朝夕の空気には冷たさが増し、季節の移ろいを感じます。そんな中、今年も「秋の読書週間」(10月27日~11月9日)が始まりました。

本校の図書館です。

入口には新着図書の案内があります。

読書によって得られるのは単なる情報ではありません。思考の材料です。「読書は心の糧(かて)である」といわれるように、人は、書物に記された知識や思想を読み解き、自分の中に取り込むことで、考え、問いを持ち、成長してきました。つまり、読書は学びの原点です。

現代は、情報があふれる時代です。電車の中を見渡せば、多くの人が読書をするよりもスマートフォンの画面を見つめています。ニュース、動画、SNS——スマホはたしかに便利で、手軽に情報に触れることができます。しかし、そこに「考える時間」はあるでしょうか。

情報は消費されていくものですが、読書は心を育てるものです。読書は、情報を「使い捨てる」のではなく、自分の中に「根づかせる」営みといえます。

読書は、静かな時間の中で言葉と向き合い、想像力を働かせ、自分の内面と対話する行為です。スマホだけでは得られない「深さ」が、そこにはあります。ページをめくるたびに、私たちは物語の世界へと旅立ち、登場人物の感情に寄り添い、ときには自分自身の価値観を問い直すことになります。

学びは、読むことから始まり、読書は、心を育てます。大切なのは、たとえどんな本でも読んだ後に「自分は何を感じたか」「何を考えたか」を問いかけてみることです。読書週間をきっかけに、生徒の皆さんが一冊でも多くの本と出会い、「読むこと」の意味をあらためて感じてくれることを願っています。