ぼくたちはいつだって前に進める!
9月に開催された東京2025世界陸上競技選手権大会(世界陸上)は、34年ぶりの東京開催ということもあり、連日大きな盛り上がりを見せ、数々の感動を私たちに届けてくれました。なかでも、男子110mハードルに出場した村竹ラシッド選手の姿に心を動かされた人は多かったのではないでしょうか。
村竹選手は、昨年のパリ五輪で日本人として初めて同競技の決勝に進出し、5位入賞を果たしました。今年5月のアジア大会では優勝を飾り、今回の世界陸上ではメダル獲得が大いに期待されていました。
しかし、結果は惜しくもメダルに届かず、再び5位入賞という成績に終わりました。インタビューで悔し涙を流す村竹選手の背中に、アナウンサーがそっと手を添える場面は、競技の枠を超えた人間ドラマを感じさせるものでした。
そんな村竹選手には、忘れられない恩師がいます。中学時代に陸上の楽しさを教え、厳しくも温かく指導してくれた高嶋先生です。卒業後も、高嶋先生は村竹選手を見守り、励まし続けていたといいます。
インタビューの後、観客席に高嶋先生の姿を見つけた村竹選手は、「何が間違ってたんだろう?」と語りかけました。すると先生は、迷いのない声でこう答えました。
「なにも間違ってない! その気持ちがあれば、また前に進めるよ!」
その言葉に、村竹選手は再び笑顔を取り戻したといいます。恩師の言葉は、「立ち止まらず、前に進んでいいのだ」と私たちに教えてくれます。
人はときに、結果にとらわれすぎて自分を責めてしまうことがあります。それは、私たちの日々の学びにも通じることです。小さな努力の積み重ねは、すぐに結果に結びつかないかもしれません。そんなとき、「何が間違っていたのだろう」と自分を責めそうになることもあるでしょう。
けれども、皆さんが積み重ねてきた努力は、確実に未来をつくる力となり、皆さんを前へと押し出してくれます。失敗や挫折はゴールではなく、次に進むための通過点にすぎません。そして、そこには必ず応援してくれる人がいます。先生や友人、家族の言葉が、皆さんを「もう一歩前に」進ませてくれるのです。
秋は「実りの季節」と呼ばれます。どうか、自分が積み重ねてきた努力という「実り」をしっかりと見つめ、胸を張って歩んでください。もし思うような結果が出なかったとしても、「何も間違っていない」と自分に言い聞かせてください。そして、どんなときも——ぼくたちはいつだって前に進める!
その気持ちを胸に、一人ひとりが新しい一歩を踏み出していきましょう。