「啐啄の機」 No.20(2023年1月10日)

2023.01.10

時間は有限 可能性は無限
 
新年明けましておめでとうございます。年があらたまり令和五年となりました。皆さまには新たな年を健やかにお迎えになったことと存じます。
 
本校では本日(1月10日)が三学期の始業式。今年は暦の関係で、例年よりもちょっと遅めのスタートでした。ただでさえ短い三学期であるうえに、「一月往ぬる 二月逃げる 三月去る」とはよく言ったもので、年の初めは何かと慌ただしいものです。うかうかしている間に年度の終わり、卒業式を迎えることのないよう、気持ちを引き締めて過ごしてまいりたいと思っています。
 
ところで、「光陰矢の如し」とか「時は金なり」といったように、時間に関する諺・格言は数多くあります。「時間」という概念はおそらく人間だけが有しているもので、目に見ることの出来ない「時の流れ」に対して、人類は特別な関心を抱いてきたようです。
 
世界的な自動車メーカーである本田技研工業の創業者本田宗一郎氏は、独特の人生哲学を持っていました。本田氏は現代にも通用する多くの金言を残しており、そのうちの一つに次のような言葉があります。
 
「一日二十四時間、世界中、どこのどんな人間にも平等に与えられているものは時間しかない。この時間をどう使うかによって、その人の人生が決まってくる」
 
貧しい家に生まれ、静岡の町工場から身を起こし、苦労を重ねて「世界のホンダ」にまで育てあげた本田宗一郎氏は、時間に対する特別な意識を持っていたようです。
 
人はそれぞれ与えられた環境や能力が異なります。それが多様性というもので、人に得意不得意があるのは当たり前のことです。
そうはいうものの、我々はときに他人の境遇をうらやんだりすることもあります。最近では「親ガチャ」──私は好きな言葉ではありませんが──などといって、人生というのは生まれ育った環境で決まってしまうといった極端な考え方をする人もいるようです。

そのように一人ひとり異なる境遇や個性を持った私たちですが、時間だけはすべての人に平等に与えられています。世界中どこに行っても一日は24時間ですし、一年は365日です。ですから、私たちはその平等に与えられた時間をどう使うかによって、自分の運命をいくらでもかえることができるはずなのです。
 
自然界では悠久の時間が流れていますが、永遠の命を持たない我々にとって時間は有限です。それでも人類はそうした限られた時間の中で、文化を育て科学を発展させてきました。まさに有限である時間の使い方によって無限の可能性を広げてきたのです。
 
時間は有限ですが、可能性は無限です。そして、その有限の時間はだれにでも平等に与えられているものです。私自身、年頭の決意が三日坊主とならないように、「時間は有限 可能性は無限」を意識して、これからの一年を過ごしてまいりたいと思います。

自然の中での時の流れを感じます