「啐啄の機」 No.19(2022年12月1日)

2022.12.01

Gift ~ クリスマスカードができました
 
早いもので今年も12月になり、街にイルミネーションが輝く季節になりました。本校では毎年この時期に合わせて、今年来校してくださった小6・中3の受験生の皆さん宛に、激励のメッセージを添えたクリスマスカードを贈っています。今年のカードは本校の漫画美術同好会の生徒たちがデザインを考えてくれました。今、私はその素敵なクリスマスカードを眺めながら、受験生の皆さんがどんな気持ちでこのカードを受け取ってくれるのかと思いを膨らませています。
 
それにしても、だれかへ贈り物をするときというのは、どうしてこうもわくわくした気持ちになるのでしょうか。クリスマスにしろ誕生日にしろ、自分の選んだ贈り物を受け取ってくれるときの相手の笑顔を想像するだけで、私たちはすでに心が満たされたような気持ちになります。お正月の年賀状にしても、皆さんはそれを受け取る人の笑顔を思い浮かべながら書いているのではありませんか?
 
贈り物というのは、それが本当に相手のことを思う気持ちからのものであるなら、それを贈ったときには既に十分な満足を得ているものなのかもしれません。クリスマスをテーマにしたオー・ヘンリーの名作「賢者の贈り物」が私たちの心を打つのも、きっと同じ理由なのだと思います。逆に、贈った物に釣り合うだけの見返りを求めるような下心があると、かえってそれを贈られたほうも素直に喜ぶことができなくなってしまいます。
 
ここ数年で、「利他(りた)」という言葉をよく耳にするようになりました。利他とは、自分よりも他者の利益を優先する考え方のことです。コロナ禍によって「ソーシャルディスタンス」や「マスク着用」といった他者への配慮を強く意識するようになったことが、利他という言葉が広まった理由の一つと言われています。また、SDGsの唱える持続可能な社会をつくるためには、自分のことばかりを考えていてはいけないということもあるのでしょう。
 
もちろん、この「だれかのために」という利他の気持ちは尊いものです。けれども、それが個人と個人の関係での「あなたのために」になると、気をつけていないとそれが単なる自己満足であったり、押し付けになったりする恐れがあります。さらにはそのことで相手の心に重荷や負い目を生じさせてしまうようなことがあるなら、そこには無意識のうちに支配関係が生まれてしまい、結局は「あなたのために」が「自分のために」になってしまいます。このことは、特に大人が子どもに接する時には、おおいに自覚的でなければならないことだと思っています。
 
サンタクロースが世界中の子どもたちに愛される理由は、きっとサンタクロースが見返りを求めていないからなのでしょう。決して姿を現さず、お礼の言葉すらも求めないサンタクロースの存在こそが、子どもたちにとっての究極のGiftと言えるのかもしれません。
 
受験生の皆さん。これからはいよいよ本格的な冬を迎えます。どうかコロナに負けず、悔いの残らぬように精いっぱい頑張ってください。夢に向かって頑張っている皆さんの姿はそれ自体が尊く、きっと皆さんを支えてくれている周囲の人たちへのGiftになっているはずです。
 
来年の春、そんな皆さんのもとへ最高のGiftが届きますように、私は心から祈っています。

今年のクリスマスカードです。(作画:漫画美術同好会)