「啐啄の機」 No.16(2022年9月1日)

2022.09.01

夏休みを利用して、長野県にある入笠山(にゅうかさやま)を歩いてきました。入笠山は南アルプス最北部に位置しており、標高1,955mの山です。山頂近くまではゴンドラが通じているため比較的容易に登ることができ、シーズン中は大勢の登山客でにぎわいます。この日、私は下界の猛暑を逃れ、久しぶりのトレッキングを満喫してきました。

山頂からの眺望(2022年8月)

入笠山には今年の2月にも訪れています。真冬の入笠山は見渡す限りの雪景色で、夏山とはまったく違う厳しい顔をしていました。結局このときは途中で吹雪にあい、山頂までたどり着くことができずに引き返しました。ですから、この夏は6ヶ月越しでのリベンジを果たしたことになります。

冬の入笠山(2022年2月)

当たり前のことですが、自然は人間の思いどおりにはなりません。もちろん、山に行くときには入念に計画し十分な準備をしますが、それでも山というのは気まぐれで、そのときどきで違った表情を見せます。そのため予定通りにはいかず、計画を変更したり、計画そのものを中止したりしなければならないこともあり、私たちはそうしたありのままの山の姿を受け入れるしかありません。

私が山歩きをはじめるようになってから、まだ10年ほどですが、山での経験を重ねるうちに、私は「ありのままを受け入れる」ということがとても大切だと、あらためて思うようになりました。

本校では、今日から二学期が始まりました。長い夏休みを終え、生徒たちはいろいろな表情で登校します。友達に会えるのが楽しみだといった表情、久しぶりの早起きで眠たそうな表情、宿題が終わっておらず焦りに満ちた表情もあります。そして、なかにはなんともいえない憂鬱そうな表情の生徒がいたりもします。

私は朝の校門に立って、心の中で「みんな久しぶり。よく来たね!」とつぶやきながら、そんな生徒たちを出迎えます。どんな表情で登校してきても、私はありのままの生徒たちを受け入れたいと思っています。そうでなければ、彼らを理解し共感することなどできませんから。そして、そんな生徒たちが学校から帰るとき、みんなが笑顔で校門を出て行ってくれるなら、それはどんなに素敵なことでしょう。

夏の入笠山の頂上から、はるかに八ヶ岳を見渡しながら、私はぼんやりと9月からの新学期のことを考えていました。私自身が常に笑顔で生徒たちを迎えることができるように、これからもときどき山に来ようと思っています。