中学3年生・公民の授業(講師:瀬戸久美子先生)

2026.03.02

中3公民の授業で、Forbes JAPANコントリビューティングエディター/特集デスク兼任であり、大学での教育・起業支援にも携わる瀬戸久美子さんをお迎えし、単元「グローバル化する経済-国境を越えるもの・情報・人・お金」に関連した特別授業を実施しました。
 
瀬戸さんは今年のダボス会議に現地参加し、各国首脳や世界の経済界を牽引するCEOたちの講演・議論を直接見聞きされています。ニュースでは伝わりきらない空気感や、世界がいま何を課題と捉え、どこへ向かおうとしているのか。現場で得た一次情報をもとに、生徒たちへ「世界の最前線」を等身大の言葉で届けてくださいました。
 
授業前半では、ダボス会議を手がかりに世界が直面するリスクを俯瞰しました。ここ数年、短期の最重要リスクとして「誤報と偽情報」が示されてきた一方で、今年は戦争や分断など地政学的リスクへの警戒が強まり、「国家間の武力衝突」への関心が高まっていることも共有されました。
変化の只中では、「情報を見極める力」と同時に、「世界の秩序がどこで、誰の論理で組み替えられているのか」を読む視点が欠かせません。
 
その延長で議論したのが、「旧秩序が戻るのを待つ」のではなく、現実を丁寧に捉えたうえで行動するという視点です。ルールや制度が揺らぐ局面では、沈黙はしばしば「同意」として扱われます。だからこそ、カナダのカーニー首相の言葉も手がかりに、ミドルパワーが連携し、共通の基準や協力の枠組みを自分たちの手で組み立てていくことの意味を確認しました。
 
「テーブルに着かなければメニューに載る」——
国境を越える経済の時代ほど、声を上げ、合意形成に参加し、一貫した基準で行動することの重みを捉え直しました。
 
続いて、ダボス会議4日目の午後、テスラCEOのイーロン・マスク氏が「間違っている楽観主義者でいるほうが、正しい悲観主義者でいるよりも人生の質が高くなる」と呼びかけた言葉も紹介されました。
 
瀬戸さんはこれを二項対立の“答え”としてではなく、揺れる時代に何を大切にし、どう希望を描いて関わり続けるのかを考える入口として提示しました。そして、結論を急がず、互いの感じ方や根拠を確かめ合う「対話」の重要性を、生徒一人ひとりに投げかけました。
 
授業後半の中心となったのは、「人間の鼓動」という言葉でした。瀬戸さんはこの言葉に、「気づかせる力」と「想像を促す力」の両方が込められていると語ります。自分はいまどこに立ち、何に揺さぶられ、何を守り、何を選び取ろうとしているのか。“自分のありよう”に気づくことが、内省と行動の源泉になる。さらに、他者の存在に心が触れることで、立場や数字を越えて相手を思い描く想像力が立ち上がる。
 
一方で私たちは、言葉で世界を括った瞬間に、現場の温度や痛みといったリアリティを見失いがちです。だからこそ瀬戸さんは、「鼓動」に立ち返りながら対話すること——同じ場に立ち、自分の言葉で意思を表し、相手の言葉を受け止めて更新していくことの大切さを、生徒たちに伝えてくださいました。
 
不確かな時代だからこそ、目の前の世界と自分自身に丁寧に向き合い、対話を重ねながら一歩を選び取っていく。その積み重ねが、これからの社会と未来を形づくっていくのだと感じさせられる授業となりました。