「校長ブログ」 No.89(2017年5月13日)

2017年5月13日 7:50 AM

五月病

 

大学生になる実感がわかなくてゆるいパーマをかけてみました

今春晴れて大学生となった『朝日歌壇』の常連、松田梨子さん。4月9日掲載のこの歌は、新しい生活を前にして期待と不安の入り交じった中途半端な気持ちを、「ゆるいパーマ」という言葉で表現していて面白味があります。

 

新入生にとって大学生活最初の戸惑いは、すべてが自己裁量・自己責任で物事を進めなくてはならないことではないでしょうか。高校までは自分の所属するクラスと座席が用意され、時間割も決まっていて、細々とした決まり事も担任の先生がていねいに教えてくれる、それが当たり前でした。ところが、大学生になった途端、ごく簡単な説明を受けただけで「あとは自分で決めて下さい」と言われるのですから、戸惑うのは当たり前です(私自身も覚えがあります)。最近は高校並みにホームルームや担任制度を設けている大学も多いと聞きますが、学生数の多い大学では、なかなかそこまでサービスできないのが実情でしょう。

 

日本では4月が新年度の始まりです。新入生、新社会人にとって4月は新しい環境への期待と不安で緊張の日々が続きます。そんな怒濤の一ヶ月が過ぎるころ、絶妙なタイミングでゴールデンウィークがやってきます。4月の頑張りをいやすための休日であるはずですが、ここに落とし穴があります。

 

新しい環境に適応しようと精一杯頑張ったけれど、GW中に精神的な疲れがどっと出て、休みが明けてからも何となく授業をサボる癖がつく(高校までと違って大学から「どうして休んでいるの?」という連絡が入ることもありません…)。ひどいとそのまま大学に行かなくなってしまい、留年→中退となるケースも少なくないようです。こうした症状(?)を、日本では昔から「五月病」と呼んでいました(もちろん正式な病名ではありません)。

 

先日、『大学1年生の歩き方』という本を読みました。「学生生活に失敗したくないけれど、キラキラ大学生(「リア充」と言われる人たちのこと?)になりたいワケでもない大学1年生」、「ぼっちが怖い、何をすればいいかわからない、一度失敗したらもう終わりだ…そんなふうに考えてしまう人」向けに書かれた、大学1年の12ヶ月を乗り切るための異色のガイドブックです。「出会いの4月」「通常運転の6月」「自由の8月」「恋愛の9月」「嫉妬の10月」「祭りの11月」…、各月のタイトルが大学1年生たちにとってどんなシチュエーションなのかを連想させるようになっていて面白いです。

 

もちろん、この本でも5月は「迷いの5月」として「五月病」が取り上げられています。ここでは、GW後のサボリ癖から「閉じこもり」に陥らないようにする方策として、自分の居場所を複数化しておくことがアドバイスされています。自宅や下宿(これは死語かな?)に閉じこもらずに、サークルの部室、挨拶できる人のいる教室、図書館や学食など、「居ても辛くないな」と思える場所がいくつかあると、「閉じこもり」に陥らないだけでなく視野や見聞を広めることにもつながり、学生生活が快適になると書いてありました。もう一つ、辛いこと、苦しいことがあったら、思い切って(友達でも家族でも誰でもいいから)周りの人に話してみることも良いとアドバイスしています。

 

この本は「失敗しても大丈夫、大学生活は何度でも仕切り直せる。絶対に何とかなる!!」というスタンスで一貫しています。つまり、「転ばない方法」ではなく「安全に転ぶ方法」を伝授する本です。

 

大学1年生に限らず、新環境になかなか馴染めずにいる人たちを楽な気持ちにさせてくれる、そんな一冊だと思います。

 

 

トミヤマ ユキコ・清田 隆之著『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(左右社 2017年4月刊)