「啐啄の機」 No.8(2021年12月1日)

2021.12.01

わからないことの先に見えるもの

早いもので、今日から12月です。いろいろなことのあった二学期も終わりに近づき、本校では明日から学期末考査が始まります。学校では考査の一週間前から部活動の停止期間に入りました。ですから、ここ数日の放課後には、多くの生徒たちが試験対策のために熱心に勉強している様子を目にします。

国内のコロナ感染者数がだいぶ減少してきているとはいえ、今でも学校では下校時刻を繰り上げたり、また校内での活動場所を制限したりといった感染対策を続けています。そうした状況の中でも、生徒たちはそれぞれに時間の使い方を工夫して勉強に取り組んでいるようです。

感染対策のために自習室は座席数を削減しています。

自習室の入口には消毒用のアルコールを置いています。

勉強をしていてどうしてもわからないことが出てくると、生徒たちは先生方のもとに質問に訪れます。そして、自分の中にあった疑問が解決すると、「なるほど!」「そうか!」と言って、再び勉強に取り組みます。そんなときの生徒たちの顔はとても晴ればれとしていて、少し大人びて見えたりもします。そんなふうに、わからなかったことがわかるようになり、知識を一つひとつ積み上げていくことが、彼らの成長につながっているのでしょう。

先日、将棋界では藤井聡太プロ棋士が最高峰のタイトルである「竜王」を獲得して、最年少四冠となったことが話題になりました。その記者会見の場で、藤井四冠は「将棋とは?」という質問に対して次のように答えていました。

「将棋は奥が深くて、どれだけ考えてもわからない。それでも一手指すごとに新しい発見を与えてくれるものだと思っています。」

現役最強棋士である藤井四冠が「どれだけ考えてもわからない」と述べるほど、将棋の奥深さは計り知れないものなのでしょう。しかし、その「わからない」将棋でも「一手指すごとに新しい発見を与えてくれる」というところに、藤井四冠の強さの秘密があるのかもしれません。きっと藤井四冠は、「わからない」ことの先にある「新しい発見」を積み重ねることで、強くなっていったのだと思います。

成長とは、「わからなかったことがわかること」「できなかったことができるようになること」であり、その積み重ねです。そして、藤井四冠の言葉のように、その積み重ねには終わりがありません。人は、知識が増えれば増えるほど、新たな疑問が湧いてくるものです。だからこそ、人類はこれまで発展し続けてきたのであり、人はいつまでも成長し続けることができるのです。

わからないことの先には、新たな発見があり、成長した自分自身がいます。学校には勉強だけではなく、部活動や委員会活動また学校行事など、生徒たちにとってたくさんの成長の場があります。そこには、たくさんの「わからない」や「できない」が待っていることでしょう。けれどもその一方で、それを手助けする先輩たちや先生方もいて、生徒たちの成長の手助けをしています。

向上心とは、わからないことの先に成長した自分の姿を見ることです。生徒の皆さんはこれからも向上心を持って、大いに「わからない」や「できない」にチャレンジしてください。そして、明日からの学期末考査も、君たちの成長の機会だととらえて、しっかり取り組んでもらいたいと思っています。