「啐啄の機」 No.2(2021年5月1日)

2021.05.01

探究学習「問いを立てる」

学習指導要領の改訂により、中学校では2021年度から教育課程が新しくなり、高等学校においては2022年度入学生から新教育課程に移行します。カリキュラムの改訂にともない、今年度から本校では中学の各学年で「探究」を教科として時間割に組み込み、週に1時間の探究学習を行っています。(注:教育課程表上の教科名は「総合的な学習の時間」)

本校の探究学習では、各学年における学習目標を以下のように定めています。
・中学1年次 : 「なぜ?」(疑問を持つ)
・中学2年次 : 「調べる」(行動を起こす)
・中学3年次 : 「気づく」(自分なりの答えを出す)

そして、その授業においては、担当教諭の指導のもとで、
 課題認識 → 調査 → 分析・思考 → まとめ・表現 → より高度な課題認識
という学習サイクルを回しながら生徒たちの課題解決能力を育成し、探究活動に必要な基本的技能を習得することを目指します。

こうした探究学習のなかでも、私たちがもっとも重視しているのは、「問いを立てる」という活動です。授業では問いを立てる練習として、我々の身近にあるものを問い直してみるということもしています。

この日の「探究」では、生徒たちにネジと釘を配り、思いつく限りの疑問をワークシートに書きだしてもらいました。

数種類のネジや釘

5W1Hで考えよう

実際に手に持って確かめます

ワークシートに取り組んでいます

生徒たちからあがった疑問をいくつか紹介してみましょう。
・ネジや釘が最初に使われたのはいつの時代?
・ネジに+(プラス)と-(マイナス)があるのはどうして?
・ネジと釘は、どんな場面で使い分けているんだろう?

与えられた課題に対してきちんと正解を導くことも、もちろん大切です。けれども、それだけで終わってしまうと、課題を与えられなければ行動を起こせない人間になってしまうおそれがあります。「問いを立てる」というのは、探究学習のスタートである「課題認識」につながる、とても大切な活動です。

これからの世の中は曖昧で不透明、価値観が多様化し予測不能な時代といわれています。そうした世の中では、いったい何が正解なのか誰にも分からない、もしかしたら正解そのものが存在しないという問題がたくさんあることでしょう。ですから、いったい自分は何に対して取り組むべきか、という「問い」そのものを自分自身で見つけることができなければ、社会にとって本当に必要な人材にはなりえません。

問いとは、その人自身の価値観に根差したものです。世の中の何に疑問を抱き、何を解決すべき問題と考えるのか、それはその人が人生において何を大切にしているのか、ということと大きく関わっています。学ぶというのは、その人の人生を支える価値観を築くことであり、その人自身が一生かかって取り組むべき課題を見つけることだと言えるでしょう。進学や就職の際にも、自分なりの問題意識を持っていなければ納得のいく選択をすることはできません。

本校の探究学習では、授業内の活動を通してさまざまな価値観に触れ、気づきや発見に出会います。そして、そのなかで小さな疑問を大切にする姿勢を育んでいきます。生徒の皆さんには、本校での探究学習をとおして、生涯かけて取り組むべき自分だけの問いを見つけてほしいと願っています。