「校長ブログ」 No.190(2020年9月2日)

2020.09.02

ドラマ『半沢直樹』の楽しみ方

日曜夜9時放映中の『半沢直樹』、やっぱり面白いですね。7年前の前作同様に、毎回欠かさずテレビの前で正座して(しているような気持ちで)観ています。

次々に襲いかかる難敵、困難に対して、バンカーとして顧客の利益を最優先に考え、不屈の闘志で立ち向かう半沢の姿には、観ていて鳥肌が立つ思いがします(だいたい9時48分から50分ころにかけて)。これほどわかりやすい勧善懲悪ドラマは、時代劇の放映がほとんどなくなっている最近では珍しいのではないでしょうか。いや、半沢直樹こそ現代を舞台とした正統的な時代劇です。それは、中車(香川照之)、猿之助、松也、愛之助といった歌舞伎役者たちのケレン見たっぷりの演技によるところが大きいと思います。(彼らの影響でしょうか、堺雅人らの演技も最近は歌舞伎っぽく見えませんか?)

今回は池井戸潤さんの原作2冊(※1)を元に、前半の4回は企業買収(M&A)を、そして今放映中の後半は大企業の経営再建(明らかに日本航空が下敷きですね)をテーマにしています。経営破綻寸前の帝国航空の再建計画を任された半沢に、国土交通相肝いりのタスクフォースが500億円もの債権放棄を求めてきますが、これを断固拒否をする半沢。債権放棄の要求の裏には、何やら有力政治家と銀行上層部との癒着が隠されているらしく…。この続きは来週を待たなければなりませんが、今日は、半沢がこだわる債権放棄の持つ意味について、ちょっと考えてみましょう。

広く預金者という顧客からお金を預かり、資金を必要としている個人や企業という顧客にそのお金を貸し出す。そして貸し借りそれぞれの利子の差額分を自らの収益とする、そういうビジネスモデルを基本とするのが銀行業です(※2)。貸したお金は返してもらわなければこのビジネスは成り立ちません。払えないから借金を棒引きにしてくれと言われても、安易に「はい、そうですか」とは絶対に言えません。

とは言うものの、借り手が破産してしまっても貸したお金は戻ってこない。企業の倒産は銀行が損失を被るだけでなく、銀行を信頼してお金を預けてくれている預金者の不利益にも繋がってしまうので慎重な判断が必要です。無理のない範囲できちんと返済してもらった方が銀行にとっても預金者にとっても、そして債務者(借り手)にとっても得(借金棒引きでひと息つけても、新たに借金することはもうできませんよね。鎌倉時代の徳政令を思い出してください!)なはずです。そのへんを見極めることが半沢たちバンカーの腕の見せどころでしょう。だから、政府の言いなりのままに500億円の債権放棄を認めることは、半沢のバンカーとしての矜持が許さないのです。

「貸すも親切、貸さぬも親切」という言葉がドラマの中で出てきました。銀行は成長が見込める、社会的に意義のある事業を展開しようとする企業に対して、適正な融資をすることで預金者のお金を活かす、そういう社会的意義のある仕事である。この言葉や半沢の心意気にはそんな意味が込められていると思います。

『半沢直樹』はドラマとして面白いだけではなく、経済・金融の勉強にもなりますね。

さて、ここまで書いていて、ふと、ずいぶん昔に観た、あるアメリカ映画を思い出しました。そのお話は次回にでも…。

※1 池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ともに講談社文庫刊)

※2 現在は超低金利時代ですから、そういうビジネスモデルが銀行の収益の柱とは、どうやら言えないようです…。