「校長ブログ」 No.173(2019年12月11日)

2019.12.11

英語民間試験導入見送り

11月1日、2021年1月に始まる大学入試共通テストにおいて、目玉となっていた英語民間試験の導入を延期するという発表がありました。民間試験を受験するための共通ID申込開始の当日というタイミングの中でのニュースでした。「読む、書く、聞く、話す」の4技能を問うとした英語試験の枠組みが大きく変更されることになり、受験生はもちろん高校や大学、教育業界に大きな動揺を与えることになりました。今後、国語や数学の記述式問題導入の是非にも波及しそうで、心配です。

そうした混乱の中、新聞社や大手予備校が主催した高大接続改革に関するシンポジウムが開かれ参加してきました。パネラーには大学入試センターの方もいて大変興味深い議論を聴くことができました。

シンポジウムの中で、パネリストのお一人がこんな話をされました。グローバル企業の新卒採用では、応募にあたってTOEICのスコア何点以上という条件を指定するのが当たり前だったが、最近になって、それをやめる動きが出てきているというのです。どうしてか?

TOEICにしろTOEFLや英検にしろ、試験である以上は事前に対策を立てることは可能であり、時間をかければ自ずと点数は取れるようになる。そもそもこうした検定試験のスコアを応募資格にしているのは、英語を通じたコミュニケーション能力を採用の重要なファクターにしたい思惑があってのことだったはずだが、TOEICのスコアが高ければコミュニケーション能力も高いというわけではないことに採用側が気づき始めたらしい。英語の話せる即戦力として期待されていたにもかかわらず、職場内でのコミュニケーションがうまくとれず早期退職する事例が続出して、企業側も考えを変えてきているようだ、とのことでした。

この話は、そもそも英語民間試験を使って受験生の何を見ようというのかという根本的な問いと結びついています。CBT(Computer Based Testing)方式のスピーキングテストでは、相手があって成り立つダイアローグ(対話)という当為即妙なコミュニケーション能力ではなく、相手のないモノローグ(独白)の英語構文としての妥当性しか測ることができないのではないか、という意見もありました。また、ある人は、知らない者同士が15分間何かのテーマで話し合うことができる能力がコミュニケーション能力であり、それは日本人の最も苦手とする能力だと言われていたのも強く印象に残りました。

英語を自由に使って世界中の人々とコミュニケートできることは素晴らしい。でも、そもそも聞きたいこと伝えたいことがなかったら、他者とのコミュニケーションは成立しません。英語民間試験の導入見送りというニュースから、コミュニケーション能力とは何かを考えさせられたシンポジウムでした。