「校長ブログ」 No.169(2019年9月20日)

2019.09.20

『世界を変えた60人の偉人たち』

映画「スターウォーズ」第1作が公開された1970年代後半、映画の中に登場するテクノロジーが、自分の生きている時代に実用化されるとは思ってもいませんでした。ところが、例えばホログラム技術などはもはや現実のものとなっています。AIやIoTなどが進歩すれば、映画の中の仮想テクノロジーも実現するかもしれません。そうなれば、私たちの生活も大きく変わっていくでしょう。

しかし、どんなにテクノロジーが発達しても、それを生み出したのは人間です。未知なるものへのあくなき探究心、技術を通じて社会の進歩に寄与しようという人間の意思力を抜きにして、技術革新の歴史は語れません。

東京電機大学出版局から出た『世界を変えた60人の偉人たち』は、そんな科学技術の進歩に寄与した科学者・技術者の思いやメッセージを、知的センスに溢れたイラストとともに紹介した本です。ピタゴラス、アルキメデス、ダ・ヴィンチ、ガリレイ、ニュートンら偉大な科学者から、ワットやスチーブンソン、ファラデー、ノーベルらの産業革命期の偉人たち、そしてエジソン、フォード、ライト兄弟、モールスといった現代文明の礎となった技術の開発者に加えて、電子計算機やロケット、原子爆弾など現代世界に大きな影響を与えているテクノロジー開発の先達たち、さらに、本学所縁の丹羽保次郎先生(「技術者は常に人格の陶冶を必要とする」)はじめとする日本人も採り上げられています。彼らのエピソードやアフォリズムの数々は大変興味深いものがあります。

「われらの目的は成功することではなく、失敗にたゆまず進むことである」
(鉄道の父 ジョージ・スチーブンソン)

「何が不可能なのかを言うのは難しい。なぜなら昨日の夢は今日の希望であり、明日の現実なのだから」
(近代ロケットの父 ロバート・ゴダード)

「『機械は考えることができるか』という最初の問題自体、議論するに値しないほど無意味なものになっているだろう」
(人工知能の父 アラン・マシスン・チューリング)

「常識と非常識がぶつかったときに、イノベーションが産まれる」
(ソニー創業者の一人 井深大)

こうした偉人たちの言葉の背景には、深い思考と地道な努力の積み重ねがあることを忘れてはなりません。

もう一つ、どの時代においても科学技術の進歩は兵器の開発と結びついているという「あとがき」の指摘は、科学技術開発に携わるすべての人にとって大変重たい言葉です。科学技術が人類平和のためだけに利用される21世紀であって欲しいと願うばかりです。

科学技術を学ぶ理工系の学生のみならず、理工学に興味を持つ中高生にも、ぜひ手にとってもらいたい本としてご紹介しておきます。

東京電機大学編『世界を変えた60人の偉人たち 新しい時代を拓いたテクノロジー』
東京電機大学出版局2019年7月刊