「校長ブログ」 No.137(2018年9月6日)

2018.09.06

多様な社会における人間関係のあり方とは? ~友人関係を通じて考える~

2学期始業式では、次期学習指導要領のキーワードの一つである“多様性”とはどういうことかというお話をしました。“多様性”を話題に取りあげたのは、夏休み中に日本人と日本の社会が“多様性”とはほど遠い状況にあるのではないかと思うような事件報道に接したことが背景にありました。

島国であり村落共同体社会の歴史的影響を受けている日本は、大陸諸国に比べて同質性や同調圧力が極めて強いという国民性を持っているのは周知の事実です。そういう日本でも否応なくグローバル化は進んでいます。簡単に言えば、これからの時代の日本人は、必ずしも自分たちが多数派だという環境の中だけで生きていくことにはならないと思うのです。

多様性を理解し、立場の異なる人や集団とも対等につきあう術を中高生時代にしっかり身につけておくことが大切だから、新しい指導要領では“多様性”の学習が重要視されているのだと思います。

中高生のみなさんには、友だちとのつきあい方、友人関係のあり方を通じて“多様性”を理解することがわかりやすいと思っています。10代で人間関係に悩まない人はいないと思うのです。もちろん私自身も中高生のころ苦しい思いをした経験を持っています。どんなに仲が良くても、自分と彼(彼女)とは違うのだということを理解するためには、それなりに痛い経験を積む必要があります。

人と人とのつながりを考える上で大変参考となる本が、菅野仁さん(2016年没)の書かれた『友だち幻想』です。この本は、友だち関係のことで悩んでいる中高生向けに、菅野さんの専門である社会学の観点から、身近な人たちとのつながりを見つめ直し、現代社会に求められている「親しさ」とはどのようなものであるかをとらえ直すための「見取り図」を提供しようと書かれた本です。初版は2008年ですが、最近、又吉直樹さんがあるテレビ番組でこの本のことを紹介して、今また大変多くの人に読まれているようです。

人と人との距離感を見つめ直し、気の合わない人とでも一緒にいる作法を身につける。「同質性」から「並存性」に発想の転換をはかることが大切。

相手を他者として意識するところから、本当の関係や親しさというものは生まれてくる。

「ルール関係」と「フィーリング共有関係」を区別して考え、使い分けができるようになることが「大人になる」ということにとっての大切な課題。

人はどんなに親しくなっても他者なんだということを意識した上での信頼感を作っていく。

こうした言葉の一つ一つが、読んでいくうちにみなさんの「腑に落ちる」はずです。友だちとの関係や人づきあいに疲れを感じているあなた、ぜひ手にとって読んでみてください。(保護者のみなさんや先生方にとっても大変参考になると思います)

菅野仁著『友だち幻想』(ちくまプリマー新書)2008年刊