「校長ブログ」 No.136(2018年8月29日)

2018.08.29

蔵書を整理する
 
夏休みもあとわずか、宿題に追われている生徒諸君も多いのではありませんか?
 
私は夏休み中、思い立って自宅書庫に眠るかなりの蔵書を処分しました。今までも引っ越しの度にかなり処分してきましたが、何年かすると、いつの間にかまた増え出して、気づけば書庫は“汗牛充棟”状態になってしまいます。
 
蔵書家というか本の収集癖のある人ならみんなそうだと思うのですが、本棚の奥行きの関係で、棚に本を二重に並べるくらいは当たり前、文庫本など判型が小さい場合は三重に仕舞い込んでいるので、奥側にどんな本があるのかは見えなくなっています。だから、間違えて同じ本を買うことがけっこうあって、今回調べたら3冊同じ本がありました。こうした不経済な上に何でも自分の手元に置きたいという自らの収集癖、所有欲にケリをつけるべく、今までにない思い切った“断捨離”を断行したわけです。
 
今回主に処分したのは、大学生のころから小遣いやアルバイト代をつぎ込んでコツコツ購入してきた、自分の専攻分野である中国古代史関係の専門書です。これがけっこうなコレクションになっているのです。専門書ですから高額な本も多く、今では入手することが難しい稀覯本もあります。苦労して執筆した卒業論文や修士論文などで参考にした研究書もあります。しかし、残念ながらこれから中国史を勉強し直そうという知力も気力もなくなりつつあり、このまま書庫に眠らせておいてももったいないと思うようになりました。
 
これらの専門書を購入した古書店の一つに一括処分したいので引き取りに来て欲しいと連絡を入れてみました。ところがあまり愛想の良い返事をもらえません。蔵書目録を作って送りましょうかと話したら、そんな時間は無駄だから、とりあえずどんな本かわかるように書棚を撮影してメールに画像添付して送って欲しい。その上で簡易査定しますとの返事でした。
 
なるほどそれなら手間を取らないなと思った反面、その程度の価値にしかならないのかとも思い、最近の古書市場についてネットで調べてみました。すると、市場価格が昔と比べて、少なくとも半額以下になっているものが多いことが分かりました。いくら日本がデフレ、不況下の「失われた20年」だったとは言え、こんなに価格が下がるとは思ってもいませんでした。
 
そこで件の古書店主にどうしてこんなに専門古書が安くなっているのか理由を聞いてみました。すると、要するに需要がなくなっているのだとの明快な答えが返ってきました。そもそも少子化によってこうした専門書を必要とする大学生の数が減少していること、国の高等教育政策が歴史学のような基礎研究分野から応用研究や実学分野を重視するようになっており、各大学も伝統的な文学部を改編して、より実社会に直結した学部・学科に衣替えするようになっていること、さらに古書価格は需要と供給のバランスの上に成り立つから、需要が減っているにもかかわらず、社会の第一線からリタイアした団塊世代を中心に蔵書を手放す人が増えて、供給がだぶついていることなどが背景にあるとのことでした。
 
そんなわけで、私の大切にしていた蔵書は期待していたほどの金額にはなりませんでしたが、書庫がスッキリする以上に今までの思い入れをすっぱり断ち切ることができて気が楽になりましたし、古書価格を通じた市場原理のメカニズムと文科省の高等教育政策のありようについて学ぶことができました。
 
さて、みなさんは、この夏休みを通じてどんな学びがあったのでしょうか…