「校長ブログ」 №125(2018年4月25日)

2018.04.25

自由になるために学ぶ ~汐見稔幸著『人生を豊かにする学び方』~

日本の学校教育は大きな変革期を迎えています。2020年の高大接続改革(大学入試改革)のことはよくニュースなどに採り上げられますが、国の教育政策の指針を示す学習指導要領も今年から順次改訂されます(中学は2021年、高校は2022年以降)。

今回の改訂で何が変わるかを端的に言ってしまえば、「何を学ぶか」だけではなく、「どう学ぶか」「何ができるようになるか」を明確化していることだと思います。子供たちに知識や技能を覚えさせるだけでなく、それらを活用してさまざまな場面に応用できる力を身につけさせようということです。変化が激しく先行き不透明な21世紀社会では、これまで以上に主体性を持って多様な人々と協働していくことが求められます。AIに象徴される技術革新は、学校で学んだ知識・技能を一瞬のうちに陳腐化させてしまいます。だから、学ぶ内容も大切だが学び方をより重視しようという意図が感じられるのです。

そんな大きな教育改革の渦中にある中高生のみなさんには、この機会に改めて「何のために学ぶのか」という根源的な問いと向き合うことも必要ではないかと思います。その際、大変参考になるのが、教育学者で幼児教育の専門家である汐見稔幸先生の『人生を豊かにする学び方』という本です。中高生向きに平易な語り口で書かれた170頁ほどの本ですが、ご自身やお子さんの体験談を含めた具体的な事例を通じて、学びや学び方、さらに人生の意味を考えさせてくれます。

「何のために学ぶのか」に対して、汐見先生はずばり「自由になるために学ぶ」と言います。ここで言う自由とは、知識や技能を身につけ偏見や思い込みから解放されて、たくさんの選択肢の中から目的に応じて選ぶことができる状態のことです。「自分の人生を自分で決めることができる」と言い換えることも可能でしょう。

学ぶことは山を少しずつ登っていくようなものだとも言います。山の中では見えなかったが、ある高さに至ると景色が広がりはじめ、自分のいる場所が徐々にわかってくる感じです。中高生にとっては、学びの山登りは始まったばかりだから、どこにいるのかわからない状態でしょう。でも、学ぶにつれて、いろいろなことがつながって物事を俯瞰できるようになると、自分の立ち位置や自分が生きている世界が見えてくるというわけです。

他にも、自分の「好き」を見つけること、自分に合った勉強法の見つけ方、中高生にとって避けて通れない受験勉強との向き合い方、そして21世紀に必要な知性など、様々なテーマから学ぶことの意味を考えていきます。

あとがきには、今も学ぶことに貪欲な98歳になられる汐見先生のお母様のことが紹介されていますが、大人こそ学び続けなくてはならないと教えられた気がしました。生徒のみなさんのみならず、先生方にとっても参考になると思います。

汐見稔幸『人生を豊かにする学び方』(ちくまプリマー新書2017年10月刊)