「校長ブログ」 No.112(2017年12月12日)

2017.12.12

年の瀬に聴く第9

川越に住む卒業生がベートーベンの第9を歌うので聴きに行ってきました(12月10日 小江戸川越第9の会 於:ウエスタ川越大ホール)。オーケストラ、合唱ともに毎回メンバーを公募して結成される今年で7回目の演奏会だそうです。この日のために何ヶ月も練習を重ねた成果を披露する晴れの舞台にふさわしい立派な演奏会でした。

アマチュアの即席編成のオケとコーラスですから、アンサンブルが乱れたり音程が怪しかったりするのは仕方ありません(演奏の精度を求めるならプロの演奏を聴けばいいのです)。演奏の瑕疵を補って余りある、音楽することの喜びや100人以上が心を合わせて歌い奏でることの素晴らしさを体感できることが、こうしたアマチュアの演奏会の醍醐味でしょう。

ところで、年末になるとベートーベンの交響曲第9番「合唱付」のコンサートが、日本中いたるところで開催されます。手元にあるコンサート・ガイドブックを調べたら、12月の1ヶ月間で第9演奏会がアマ・プロあわせて109公演もありました(「音楽の友」12月号別冊付録より)。今度の日曜日(17日)には、北は北海道、南は大分まで全国17カ所で演奏されます。この日だけでいったい何人の聴衆が第9の生演奏を聴くことになるのでしょう?1会場に平均1300人の聴衆がいると仮定して、ざっと2万2千人。これは凄い数字ではありませんか!
 
第9の演奏にはフルオーケストラと4人のソリスト、そして何十人もの合唱団を必要とする超大作です。荘厳にして格調高く人類愛を歌い上げる音楽ですから、欧米では祝祭的な特別な場で演奏されることが多いようです。しかし、日本のように年末に限って100回以上も演奏されることは他の国には全く見られない現象だそうです。いったいどんな事情から年末に第9という風習が始まったのか、ちょっと気になりますね。

調べてみると、優雅に演奏会を楽しむ余裕もなかった戦後すぐの1947年の年末、現在のNHK交響楽団の前身、日本交響楽団が3回にわたり第9演奏会を行ったのが事の始まりだったようです。経済的に苦しい団員の年越し費用を稼ぐために、確実にチケットが捌ける第9をチョイスしたら案の定大当たり。それが慣例となり、その後生まれたプロオーケストラも右にならえで一気に公演数が増えていったのが昭和40年代。さらに東京のみならず地方へも積極的に引っ越し公演を行った結果、年末の第9は全国に広まりました。最近では聴くだけではなく、川越のみなさんのように自分たちで第9を演奏しようという「一般参加型」公演が増えてきていることは特筆に値します。

この一年を振り返り、新しい年の平和と安寧を願って第9に耳を傾ける。日本人の年越し行事の一つとしてすっかり定着した感ありですが、さて、泉下のベートーベンは極東の島国津々浦々に流れる「歓喜の歌」にどんな思いでいることでしょう…。

※毎年大晦日にはNHK交響楽団の第9演奏会がEテレで放映されます。紅白の合間に第4楽章だけでも聴いてみてはいかがですか?