2017.05.02
ピアノ前奏からシューベルト独特の優しく瑞々しい感性が全開し、この歌曲の世界観を提示しています。そういう意味でも、この曲はピアノパートが素晴らしいです。その伴奏にのせて、過ぎ去った美しい恋の記憶と別れの切なさを、どのように声で表現するかが歌い手の腕の見せ所でしょう。この原稿を書くために、名歌手たちの録音を聴き比べました。シュワルツコップの気品、アメリンクの可憐さ、フィッシャー・ディースカウの明晰さ、ホッターの滋味、いずれも甲乙つけがたい名唱ですが、私は現代の若いテノール歌手であるイアン・ボストリッジの若々しく繊細な歌声が、いちばん曲想にあうのではと思いました(2014年5月 ライブ録音)。
一度聴いたら忘れられない、ほんとうに美しい歌曲です。
明日から三連休。みなさん、素晴らしい休日をお過ごし下さい。