「校長ブログ」 No.88(2017年5月2日)

2017.05.02

シューベルトの『春に』

風薫る5月となりました。新緑を吹き抜ける風が実に爽やかな季節です。天気の良い日には外へ出て、思い切り清々しい空気を身体中に浴びたいと思わせる、素敵な時候です。

毎年この時期には春の歌を紹介していますが、今年はフランツ・シューベルト(1797年~1828年)の『春に』(D882)という歌曲を紹介しましょう。

詩はエルンスト・シュルツェ(1789年~1817年)という若くして亡くなった詩人のものです。奇しくも作曲家自身も31歳で亡くなっていますね。恋人と過ごした幸せな春の日々を思い出して歌うという内容です。

Im Frühling, D882 (春に)

 

春に

 

ピアノ前奏からシューベルト独特の優しく瑞々しい感性が全開し、この歌曲の世界観を提示しています。そういう意味でも、この曲はピアノパートが素晴らしいです。その伴奏にのせて、過ぎ去った美しい恋の記憶と別れの切なさを、どのように声で表現するかが歌い手の腕の見せ所でしょう。この原稿を書くために、名歌手たちの録音を聴き比べました。シュワルツコップの気品、アメリンクの可憐さ、フィッシャー・ディースカウの明晰さ、ホッターの滋味、いずれも甲乙つけがたい名唱ですが、私は現代の若いテノール歌手であるイアン・ボストリッジの若々しく繊細な歌声が、いちばん曲想にあうのではと思いました(2014年5月 ライブ録音)。
 

一度聴いたら忘れられない、ほんとうに美しい歌曲です。

明日から三連休。みなさん、素晴らしい休日をお過ごし下さい。