「校長ブログ」 No.77(2017年1月19日)

2017.01.19

予兆を見つける

川村元気さんといえば、映画プロデューサーとして数々のヒット作(『告白』『悪人』『君の名は』)を生み出し、また小説家(『世界から猫が消えたなら』『四月になれば彼女は』)でもある、今最も注目されているクリエーターの一人です。

川村さんがどうやって次々にヒット作を生み出すことができるのか、その秘訣をある雑誌の中で披瀝されているのが目にとまりました(「スタイルアサヒ」2016年12月号 朝日新聞社)。

川村さんは映画を企画したり小説を執筆したりするには、今の世の中の「気分」をつかむこと、さらに「近未来を読む」ことが欠かせないと言います。そのために日頃活用しているのが新聞です。新聞を読むときは、時代の一歩先をイメージできるような、予兆的な記事を見つけることを心がけているそうです。

川村さんに言わせると、紙面の片隅にあるような「小さな記事」こそ今後もしかしたら大ニュースに化けるかもしれない予兆の集合体であり、そうした記事を読みながら未来を想像することが新聞購読の楽しみだそうです。もう一つは広告です。広告の全体的な傾向を見ていると、これから先何がトレンドになるのか、その予兆を見つけることができると言います。

そこまで読んで、ヒッチコック監督の『裏窓』(1954年制作)のあるシーンを思い出しました。怪我をして寝たきりになっている主人公の元に通いでやってくる看護師が主人公の世話をしながら、「私は昔、GM(ゼネラル・モーターズ アメリカ最大の自動車会社)の社長のところにも通っていたことがある。腎臓病の診断だったけれど実際は神経をやられているとわかったわ。GMの社長が何をそんなに悩んでいるのか。これはきっと会社の経営がうまくいっていないからに違いない。そうしたら案の定、株価が暴落して大恐慌が始まったの…。」映画の本筋とは全く関係ないのですが、なぜか印象に残っていた場面です。

予兆をつかむために大切なのは、川村さんやこの看護師のように、小さな変化を見逃さない感覚を磨くことだなと思います。その感覚を研ぎ澄ますためのツールとして、73号にも書いた新聞の持つ一覧性という強みが有効なのでしょう。

さらに、川村さんは予兆を見つけるには新聞をざっと見渡すだけではなく、記事の中に「疑問」を感じたら止まることが大切だと言います。多くの人が疑問に感じながらも受け流している事実には、予兆が隠されていることが多いからです。このことも先を見通す力を養う上での大切なヒントです。