「校長ブログ」 No.68 2016年10月28日

2016.10.28

自分探自分探しにもがき苦しむ就活生たちのリアルな日常 ~映画『何者』~

『桐島、部活やめるってよ』(2009年刊)で高校生たちの日常の学園生活をスクールカーストという視点で描いてデビューした、当時はまだ大学生だった朝井リョウさん。ご自身の高校生活での見聞などを元にされているのでしょうか、非常に技巧的な構成で登場人物の心理を描いて大変話題になり、映画化もされました(2012年8月公開)。

その朝井さんが就職して会社員をしながら書いた作品が『何者』です。就職活動中の5人の大学生たちを主人公にした、一種「サスペンスフル」な青春小説で、みごと第148回直木賞を受賞し、平成生まれ初めての直木賞作家となりました。

この『何者』がいま最も旬な若手俳優たちを出演者に揃えて映画化され、評判になっているのでさっそく観てきました。

同じ大学に通う就活中の5人の大学4年生たちが主な登場人物です。

演劇サークルで脚本を書いていた「冷静分析系男子」の拓人(佐藤 健)。
何も考えていないようで着実に内定に近づいていく「天真爛漫系男子」の光太郎(菅田将暉)。
光太郎の元カノで、拓人が密かに思いを寄せる「地道素直系女子」の瑞月(有村架純)。
「意識高い系女子」だが、なかなか内定のとれない理香(二階堂ふみ)。
理香と同棲中の就活には距離を置いているように見せている「空想クリエイター系男子」の隆良(岡田将生)。

彼ら5人は理香の部屋を「就活対策本部」として、情報交換したりいっしょにエントリーシートを書いたりする間柄です。でも、彼らは自分の本音をお互いに明かすことはありません。なぜなら就活という戦いではライバル同士だからです。その冷え冷えとした関係性に息苦しさを感じるほどでした。

この物語の重要な狂言回しを担っているのが、ツイッターやフェースブックなどのSNSです。登場人物たちがSNSに書き込む他者に見られることを前提とした「装う自分」と「本音の自分」の落差が、5人の人間関係に微妙な変化を与え、緊張関係を生んでいきます。(この映画は青春映画であるとともに第一級のサスペンス映画でもあります!)

ついに、5人の中から内定者=裏切り者が出て、これまで抑えられていた妬み、本音が露見していくところからがこの映画の見せ場です。5人の若手俳優たちの演技合戦も見事です。

今朝見かけた、黒バッグを片手にリクルートスーツを身にまとった就活生らしき若者を思い出しながら、なんとも胸の塞がるような気持ちで、映画館をあとにしました…。

(三浦大輔監督作品 立川シネマシティ TOHOシネマズ府中ほかで公開中)