「校長ブログ」 No.67 2016年10月21日

2016.10.21

正直であること 素直であること

日本では、学校を卒業するタイミングで社会人としての経験のない人材を正社員として一括して雇用するしくみ(新規学卒一括採用)が一般的ですが、これは高度経済成長時代に生まれた日本独特の雇用制度と言われています。近年こうした雇用慣行はグローバル企業を中心に崩れてきていると言われているものの、まだまだ多くの大企業で維持されていて、大学生の多くは3年生の後半くらいから、いわゆるリクルートスーツに身を固めて就活(シューカツ)に勤しむことになります(大学生活は実質3年もないのが実情かも知れません…)。朝井リョウさんの『何者』はそうした大学生の就活を題材にした小説で、朝井さんはこの作品で直木賞を受賞されました(佐藤健さん、有村架純さんらの出演で映画が公開中ですね)。

大学生にとっては自分の人生を左右するかもしれない就活ですが、学生を採用する側の企業も優秀な人材を一人でも多く確保するために、莫大な採用コストをかけているそうです。ある就職斡旋企業(R社とかM社などが有名)の方から聞いた話ですが、企業は一人の新卒社員を採用するのに平均50万円のコストをかけているとか。

では、企業は社会人としての経験の全くないまっさらな状態の学生のどこを見て採用するのでしょうか。ある企業で長年新卒採用を担当してきた方に聞いたところ、こんな答えが返ってきました。

グローバルマーケットで活躍するエリートやとくに専門性の高い研究職などは別として、ごく普通の新入社員に求められるスキルは、必ずしも英語力やICT能力や論理的思考力などではありません。それよりも集団の中で協力しながら与えられたミッションを遂行できるか否か、自分の課題に自分で気づき自分で改善のサイクル(PDCAサイクル)を回すことができるかが重要ですね。それが普通の人たちの集団で結果を出すために最低限必要な能力だと思います…。

面接で二人のうちの一人、どちらを採用するか迷ったら、最後は「正直さ」と「素直さ」で選びます。正直で素直な人間は、かんたんに諦めたりせずに考え抜くことや継続することができるし、変に背伸びしたり失敗をごまかしたりしないので、仕事の上でわからないこと困ったことがあっても、先輩や上司に指示を仰いだりアドバイスをもらうことに躊躇しないものです。そして、そういう新入社員に対しては周りの人間もなんとなく手をさしのべて助けてあげるものです。
そんな人間の集まった組織は、全体として業績を上げ成長していく気がします。

「正直さ」、「素直さ」とは、よく言われる「コミュニケーション能力」と同じ意味ではないかと感じます。この二つを持ち合わせていれば、どんなに厳しい就活戦線であってもなんとか乗り切ることができるのではないでしょうか。(これから電機大学をはじめとする推薦入試を受験する高校3年生にとっても参考になるお話だと思います…。)