「校長ブログ」 No.65 2016年9月29日

2016.09.29

池井戸潤の『陸王』

「倍返し!」の半沢直樹シリーズや『ルーズベルトゲーム』、『民王』、『下町ロケット』等々、その著作が次々にドラマ化されている池井戸潤さんの最新作は老舗足袋業者の奮闘を描いた『陸王』です。

池井戸作品の特徴は、世間的には決して勝組とはいえないジリ貧で八方塞がりの弱者(弱社)が、幾多の困難や絵に描いたような邪悪な敵の横槍をはねのけて、ついには逆転満塁ホームランで勝利を手にするという、読む者、観る者をスカッと気持ちよくさせることだと思います。池井戸さんはワンパターン時代劇「水戸黄門」と同様、きっちりカタストロフィを感じさせてくれる点では読者を裏切らない作家です。

埼玉県行田市の「こはぜ屋」は百年の歴史を持つ老舗足袋メーカー。しかし平成の世にあって、そもそも需要そのものが絶滅危惧種化している商品のため業績は上がりようもなく、このままでは近い将来倒産か廃業せざるを得ない零細企業である。そんな中、社長の宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してみてはどうか。
社内にプロジェクトチームを立ち上げて開発に着手する宮沢たちの前に、資金難、素材探し、試行錯誤のソール(靴底)開発、大手シューズメーカーによる妨害等々、次々に障害が襲いかかる。はたして、彼らの新しいブランド「陸王」は完成するのか…。

まあ、ネタばらしするまでもなく「陸王」は無事完成し、悪い奴らは「ざまあみろ!」になるのですが、それがわかっていても、600頁を一気に読ませる池井戸ワールドはここでも健在です。
ものづくりとは、チームワークとは、働くこととは…、といったことも考えさせてくれる良質なエンターテインメント小説として、中高生のみなさんにもお勧めの一冊でした。

因みに、いずれ『陸王』もドラマ化されるでしょう。プロデューサーになったつもりで、宮沢社長はじめとする登場人物をどの役者さんにあてるか考えながら読むのも一興です。(みんなキャラが立っているから、あてはめやすいですよ…)

(池井戸潤著『陸王』集英社刊)

(池井戸潤著『陸王』集英社刊)