「校長ブログ」 No.51(2016年5月20日)

2016.05.20

国語教科書に載った名短編小説 『教科書名短編』(中公文庫)

前号でお名前を出した佐藤雅彦先生は、かつて『教科書に載った小説』(2008年 ポプラ社刊 今はポプラ文庫で読めます)というアンソロジーを編まれたことがあります。そこには先生曰く「誰かが、人が育つ過程に於いて通過させたかった小説」という共通点が感じられる12の物語が掲載されていました。いずれも国語や現代文の教材としてだけではもったいない(少々国語の先生方には失礼な物言いでしょうか…)逸品揃いです。純粋に物語、小説としての面白さ味わい深さを生徒のみなさんに感じて欲しいと思って、当時「図書館ニュース」に紹介したことがありました。

同じように中学校国語の教科書に掲載された(今も掲載されている)短編小説集を中公文庫が2冊同時に刊行しました(『教科書名短編 少年時代』・『教科書名短編 人間の情景』2016年4月 中公文庫刊)。

「教科書に載る短編小説はみな面白い!」ことは佐藤先生の本で知っていたので、さっそく2冊とも購入して読み出しところ、やはり予想に違わずいずれも高レベルの作品群で、短編小説の醍醐味をたっぷり味わうことができました。

山本周五郎(『鼓くらべ』・『内蔵允留守』)…凜とした読後感は時代小説ならでは
菊池寛(『形』)…存在が意識を決定することの愚かさ・恐ろしさ
永井龍男(『胡桃割り』)…ナットクラッカーとともにある幼き日の思い出
安岡章太郎(『サアカスの馬』)…近代文学史上屈指の名短編!
山川方夫(『夏の葬列』)…最後のどんでん返しが凄い
阿部昭(『あこがれ』)…年上の少女へのあこがれ、これが初恋というものなのか…

こうした、すでに物故されて時の経つ(文学史の勉強で名前は知っているが読んだことはないともいえる)作家の名作の数々は、よほどの文学オタクでない限り、教科書に載っていなければ一生涯読むことはないだろうと思うのです。それではもったいないと佐藤先生と同じように考えた編集者が、きっとこのアンソロジーを世に送り出してくれたのだと思います。

合計24編の短編の中で、私の思い出の中にあったのは遠藤周作の『ヴェロニカ』(※)です。フランスの画家ルオーの絵とともに、私の心に刻まれている小品です。

※『ヴェロニカ』の教科書への初採録は1981年とあります。となると、私の中学時代とは年代があわないのですが…。
※現在、本校の中学生が使っている教科書には、24編中、ヘッセ『少年の日の思い出』、森鷗外『高瀬舟』、魯迅『故郷』、三浦哲郎『盆土産』が載っています。 
 

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