「校長ブログ」 No.50(2016年5月11日)

2016.05.11

持ち物に記名していますか?

雑誌(※)を読んでいたら、東京芸術大学の佐藤雅彦先生の「ビニール傘の所有権につきまして」というちょっと気になるタイトルの記事が目にとまりました。

外出先で急な雨に降られてコンビニで透明のビニール傘を買って学校に向かい、玄関の傘立てにポイと突っ込んでそのまま授業やら用事を済ませて、夜も11時を過ぎて帰ろうとしたら外はまだ雨。ところが傘立てにはさっき買ったばかりのビニール傘は跡かたもなく、あるのは骨が折れているような古くて汚れたポンコツビニール傘ばかり。しかたなくその中でも比較的きれい目の傘をとって帰ったのだそうです。

佐藤先生はおんぼろ傘を差しながら、安価でたやすく求められるビニール傘には所有権の観念はなくなり、アノニマス(匿名性の高い)な存在として社会の共有物となっているのではと考えました。

でも自分の新しい傘を持っていかれたことは心外であり釈然としない。かといってビニール傘の握り手部分に油性ペンで黒々と自分の名前を書き込むのもちょっとみっともないかなと思ったりもする佐藤先生です。(学生に「佐藤先生はビニール傘にわざわざ記名している!」って見られるのは恥ずかしい…)

しょせんビニール傘は消耗品、かえって捨てる手間が省けてよかったと負け惜しみを言ってみても、やっぱり他人様の私有物を「ちょっと拝借」とばかりに勝手に持っていかれたのは癪(しゃく)に違いありません。

佐藤先生、このことを学生に話したら、「リボンを巻いたら…」と提案されてなるほどと唸ります。確かに名前を書くほどではないけれど、リボンやシールなど目印をつけておけばこれは誰某(だれそれ)の物という所有権が発生し、それを勝手に持っていくことへの罪悪感が生まれるだろうと気づいたそうです。(佐藤先生の気づきはそれにとどまらないのですが、それはまた別のお話…)

これを読んだ時ふっと頭をよぎったのは、例年春先によく起こる通学バッグや通学靴などの取り違えです。(つい数日前も放課後に取り違えを伝える放送が入っていました…)たいてい新入生同士の間違いなのですが、お互い買ったばかりの新品ですからどれも同じに見えてしまう。サイズが同じだと区別がつかないでうっかり他人の靴を履いていってしまうのでしょう。こうした事故を防ぐにはすべての持ち物に記名するのが一番です。

ところで、ビニール傘のように記名するのは大げさだけどアノニマスな存在とするには抵抗がある、みなさんもそんな持ち物をお持ちではありませんか。例えば、安いけれど使いやすくて愛着のあるシャープペンシルとか定規、消しゴム…、そうした私有物には、せめて一目で自分の物だとわかるシールなど貼っておかれたらどうでしょう。きっと忘れ物も減ると思います。

生活指導部に届けられた”アノニマス”なビニール傘の忘れ物、目印のついたものもありました・・・

生活指導部に届けられた”アノニマス”なビニール傘の忘れ物、目印のついたものもありました・・・


※『暮らしの手帖』第81号(2016年3月発行)
いま放送中のNHK朝の連ドラ「とと姉ちゃん」主人公のモデルである大橋鎭子さんが創刊した雑誌です。