「進路だより」 No.5(2015年12月22日)

2015.12.22

高校3年生は、あと22日で大学入試センター試験ですから、この一年間をゆっくりと振り返っている時間はないかもしれませんが、最後まで自分に不足していることを問い続ける客観性と、今まで努力してきたことに対する自信のバランスを心掛けてください。周囲には君たちを応援している人がたくさんいることには気付いていることでしょう。私たちは応援ぐらいしかできませんが、君たちが最高のパフォーマンスを発揮できるよう心から祈っています。

高校2年生以下のみなさんには、冬休み中の自由な時間を使ってじっくり自分を振り返ってもらいたいと思います。学校生活は充実した一年間となりましたか。何事にも本気で臨めた一年間でしたか。本気に取り組まなかった様々な理由を挙げてばかりの人はいませんか。周囲の環境に不平不満を言っていても何も変わりません。時間の無駄です。唯一変えられる対象は自分だけですから。


価値判断のモノサシ

12月初旬に、ある予備校の「科目横断する未来学力 -2020新テストに向けて」という教育セミナーに同僚の教員2人と参加をしてきました。いつも思うことですが、やはり職場を一歩外に出て研修会に参加するのはとても刺激的です。講師陣が持つ知識や教養の深さ、自分の思考を言語化することの上手さには憧れさえ感じます。勉強する理由を生徒から問われて受講生である我々教員が何と答えているかという話題になり、その講師の方が次のようにお話されていたのがとても印象的でした。「勉強に不必要なものなど何ひとつない。優秀な生徒は自然と複数の科目を横断して物事を考えている。そう思いませんか。」そのお話を伺った時、以前に読んだ内田樹氏の「最終講義-生き延びるための六講」の次の部分を思い出しました。著者は大学で現代思想を教えているのですが、ある学生に授業で「現代思想を勉強するとどんないいことがあるのですか?」と訊ねられます。
 

でも、怒りをこらえて、こんなふうに説明しました。「悪いけど、僕がこれから教える話は、君にはまだその価値が計量できないものなんだよ。喩えて言えば、君には君自身の価値判断のモノサシがある。そして、そのモノサシを持ってきて、『先生がこれから話すことの価値は何センチですか?』と訊いていた。でもさ、もし僕がこれからする話が、ものの重さや時間や光度にかかわることだったら、そのモノサシじゃ計れないでしょ。世の中には、度量衡そのものを新しく手に入れなければ、何の話かわからないこともあるんだよ」

六歳の子どもが手を挙げて「先生、それを学ぶと何の役に立つんですか?」と言うとき、子どもは子どもなりに「有用性のモノサシ」を持っているわけです。でも、問題なのは、その六歳児のモノサシで世界中の価値がすべて計れると思っていることです。だから、そういうときは、「バカモン、子どもは黙って勉強しろ!」と言うのでいいんです。

「いいから黙って勉強しろ!」と言わないといけない場面て、ほんとうにあると思うんですよ。でも、「いいから黙って勉強しろ」という断定を基礎づけるロジックを今の現場の教師たちは持っていない。

「いいから黙って」という言葉が物質的な迫力を持つためには、「君には君がなぜ勉強しなければいけないのか、その理由がわからないだろうが、私にはわかっている」という圧倒的な知の非対称性が必要なんです。子どもが「あ、この先生は私が『私について知らないこと』を知っている」と実感しないと、「いいから黙って」は奏功しない。

『最終講義-生き延びるための六講』(技術評論社)


後半部分の「圧倒的な知の非対称性」がセミナーの講師の方に私が感じた感覚なのでしょう。最近様々なことを考えている時に、私自身がもっといろんなモノサシを持っていたら、もっと楽しく考えられるのになぁと感じることがたくさんあります。

中学生には少し難しかったかもしれません。自分が持っているモノサシといわれてもまだ自分では気づけないかもしれません。そんな時、友だちや周りの大人の存在が案外役に立つことがあります。中学生くらいの年齢だと、友だちや先生から自分の優れたところを評価されるのが嬉しくてたまらないものです。「〇〇は…な部分がスゴイなぁ」と、特に異性の友だちに言われようものなら、きっともっと頑張ってそのことに関しては、絶対に他人には負けたくないと思うようになる。逆に君も友だちのすごいところを発見して「あんなふうに自分もなりたいなぁ」とも感じられる。だから友だちの存在は大切だと思うのです。

終業式当日、複数のモノサシが必要な問題を以下の場所・時間に掲示しておきます。興味のある生徒は挑戦してみてください。中学生にも解けそうな気がしますが、できるかな? 答えがわかった生徒は進路指導部まで伝えに来てください。楽しみにしています。

場所:中・高職員室、進路指導室      日時:12月24日(木)11:00~12:00