「校長ブログ」 No.29(2015年11月18日)

2015.11.18

ロボット・人工知能の発達と人間

11月5日の新聞各紙には、政府が3年以内に小型無人機「ドローン」を使った宅配サービスや2020年の東京オリンピックまでに自動運転車の実用化をめざして必要な法改正やインフラの整備を進めるという記事が出ていました。数日前には国立情報学研究所の人工知能(通称「東ロボくん」)がセンター試験模試を受験して、5教科8科目の合計点511点(全国平均416.4点)、偏差値57.8をたたき出したという記事も目にしました。自動翻訳装置(ドラえもんの“翻訳コンニャク”ですね)の実用化ももうすぐそこまで来ているそうです。「これで英語の勉強から解放される!」と俄か喜びする人も出てくるかもしれませんが、人間同士の微妙な心理的やりとりや交渉をともなうような高度なコミュニケーションには対応できないので、やはり語学の習得は不可欠でしょう。

人工知能やロボットは人間社会にどんな利点をもたらしてくれているのでしょうか?

一番わかりやすいのは、人間が行うには危険が大きすぎる仕事をロボットに代行させることでしょう。自動車組み立て工場内での塗装・溶接ロボットの普及は、塗装の際に排出される有害物質から作業員を解放してくれました。高濃度の放射能に汚染されて人間が近づけない福島第一原発の廃炉作業は、人間に代わって原発建屋内で作業するロボットの開発なしには考えられません。

医療や介護の分野でもロボットの進歩は目覚ましいものがあります。介護ロボットの導入が進めば、腰痛に悩む介護士の負担を軽減させることができます。ゴッドハンドと呼ばれるような名医の手さばきを学習した医療手術用ロボットが実用化されれば、難しい手術を短時間に処理して患者の負担を軽減させることも可能になるでしょう。

人工知能が人間と同等かそれ以上の情報処理能力を持つようになるのは時間の問題です。膨大なデータ(ビッグデータ)を駆使して情報の収集、蓄積(クラウド)、分析が可能となり、研究施設や金融機関のみならず製造業や物流、サービス業など多方面に新たなイノベーションをもたらすことになるでしょう。

しかし、人工知能やロボットができる仕事が増えれば、逆に私たち人間の仕事は減ることになります。オックスフォード大学の研究者によれば、現在ある702の職種のうち10~20年以内に47%の職業が自動化されて人間の雇用が喪失される可能性があるという雑誌記事を見かけました(マイケル・A・オズボーン『雇用の未来 コンピューター化によって仕事は失われるのか』「週刊現代」2014年11月1日号記事より)。

このような見方に立てば、人工知能やロボット技術の発達は人間にとってプラスの面だけではないことに気づかされます。高い倫理観に基づいた洞察力が技術開発の前提になければ、人間の幸福のためにあるべき技術が人間存在そのものを危うくしかねないのではないでしょうか。

そんなことを考えていたら、映画史上屈指の名作とされるSF映画の古典『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督作品 1968年公開)の中で、木星探査機ディスカバリー号に搭載された人工知能HAL9000が、絶対に間違いを起こさないように設計されながら搭乗員に嘘をつくよう指令されたことで自己矛盾に陥り、ついには暴走をはじめて搭乗員を殺害してしまう…。そんな映画の一場面を思い出してしまいました。