「校長ブログ」 No.28(2015年11月7日)

2015.11.07

読書の楽しみ

10月27日から11月9日までの2週間は読書週間です。本校の中学校では8時30分からの10分間を朝読書の時間としています。朝の読書は1988年に千葉県の2人の先生たちの提唱で始まり全国に広まっていった運動です。「みんなで、毎日、好きな本を、ただ読むだけ」がこの運動の4大原則だそうです。本なら何でも良いかというと、これにはいろいろな見解があるようです。放送部の全国大会の作品『Light is Right?』でも取りあげられていました。

ここでは何を読むべきかという問題は保留にして、そもそも読書にはどんな楽しみや効能があるのかを考えてみたいと思います。
僕が考える読書の最大の楽しみと効能は、自分の知らない世界を体験できることだと思っています。自分では体験不可能なことを読書で疑似体験できるのです。

宇宙飛行士たちが宇宙空間で何を見て何を感じたのか、実際に宇宙飛行士たちにインタビューした立花隆の『宇宙からの帰還』を読めば、彼らの神秘的な体験を知ることができます。
司馬遼太郎の歴史小説を読めば、事実そのままではないかもしれないが坂本竜馬ら歴史上の偉人たちの活躍を追体験できます。
江戸時代の庶民の生活を丹念に描いた藤沢周平の時代小説を読めば、現代日本では失われつつある日本人の細やかな心情や清貧な生き方に静かな感動を覚えるはずです。
戦場という異常な空間での人間存在のありようを知りたければ、自身の戦場体験を明晰な文体で克明に描写した大岡昇平の『俘虜記』を読んでみたらいいでしょう。
恋愛小説を読むことで意中の彼氏彼女に恋い焦がれる思いを小説の中で成就させることも可能だし、人を愛することの素晴らしさ、切なさを体験できます(住野よる『君の膵臓をたべたい』がお勧めです!)。
海外文学を読むことで日本とは異なる生活習慣や価値観の中で生活する人々の気持ちを理解することも可能です。

このようにふだんの生活では体験することが難しいことでも、書物を通じて我々はそれを追体験できるのです。これが読書の最大の効能、楽しみ、喜びです。
大切なことは読み手の想像力(イマジネーション)です。本の中の世界から何を求めつかみ取るかは、読み手の側に任されています。小説などの物語を読む醍醐味は、想像の翼を広げて小説空間でのできごとや主人公の心情をどれだけ感じられるかにかかっているように思います。

秋の夜長、みなさんも1冊の本を枕元において小説の世界を堪能してみたらいかがでしょうか? 興に乗って一心不乱に読み続け気づけば朝を迎えていた、という経験も良いものですよ。(ただし学校に遅刻はしないで下さい…)

(11月7日中学全校集会での講話を元にしています)