改造・ラジコンミニ四駆


直線コースを風のように走り抜け,横Gに飛ばされそうになりながらコーナーに吸い込まれて行くエアロミニ四駆。

これと対照的に,実車の特徴をモデファイした大胆なスタイルを誇るワイルドミニ四駆。このワイルドミニ四駆の外観を壊すことなくラジコンカーに改造してしまおうというのが,今回の工作の目的です。

製作については,私はアイデアとヒントを提供しただけで,完成は石井・鶴田両君といろいろなアドバイスをしてくれた仲間の努力によるものです。


ワイルドで行こう

写真1 ラジコンミニ四駆の外観

写真1の2台のミニ四駆はアンテナを除いては改造ラジコンカーということが解らない出来栄えで,これがなかなか軽快に走り回ります。ボディ内部に余裕のあるワイルドミニ四駆を選んだことがこの工作を成功させた大きな要因です。もし,皆さんが同じような工作をしてみようと考えたなら,車種は問いませんが,なるべく内部に余裕のあるものを選んで下さい。


ラジコンの豆知識

写真2 2チャンネルラジコンシステム

今回の工作ではラジコン側にも小さな改造を行うので,ラジコンシステムについて簡単な知識をもって欲しいと思います。

写真2が今回使用する一般的な2チャンネルのラジコンシステムで,送信機,受信機,サーボ×2,バッテリから構成されます。チャンネルとはモータ等をコントロールできる回線数を言います。ラジコンカーであれば2チャンネルで十分ですが,ラジコンロボット等でいくつものモータをコントロールしたい時などには4チャンネル等のチャンネル数の多いラジコンシステムが必要になります。

バッテリは受信機とサーボを駆動するためのもので,送信機バッテリは送信機内部に格納されています。今回の工作では受信機側に写真のバッテリケースを使用しますが,電動ラジコンカーではモータ用バッテリと電源を共用するので,このバッテリケースは使用しないのが普通です。

図1 ラジコンの動き(サーボ機構)

ラジコンシステムは図1のように,サーボ出力軸の回転角を常に検出して送信機側操作レバの傾き角に比例させるという動作をとります。出力結果を常に監視するシステムは,フィードバック制御とかサーボ制御と呼ばれる基礎的で大変高度なシステムで,ロボットやメカトロなどで位置や速度をコントロールするには欠くことのできないものなのです。

ラジコンシステムは“プロポ”と呼ばれます。これはレバの操作量と出力軸の回転角を比例(proportion)するように動作させるところから付けられた名称でしょう。

今回の工作ではサーボ部分を改造する必要があるので,この部分を写真3に示します。

写真3 サーボの構造

サーボ内部には,サーボ回路基板,小形モータ,歯車,ポテンショメータが納められています。ポテンショメータとは,出力軸の回転角を知るためのセンサで,可変抵抗器(ボリューム)です。受信機からサーボ回路には操作レバの操作量が送られます。サーボ回路にはポテンショメータから常に出力軸の回転角が知らされているので,現在の出力軸の角度とレバの操作量を一致させるようにモータを駆動します。モータは歯車列によって出力軸を回転させ,その回転量をポテンショメータが検出して,送信機操作レバとの差がゼロになるまで,この動作がくり返されます。しかし,この動きは一瞬のうちに行われるので,ラジコンは敏感に反応するのです。

モータラジコンでは,サーボの出力軸にホーン(腕)を取り付けて,フロントタイヤのステアリング駆動と駆動用モータの速度切替スイッチ(スピコン)に用いているのです。


サーボの改造

これ以降は実際の改造作業になります。当然のことですが,勝手に改造した製品はメーカーのサービス外になります。また元の状態に復元できるかどうかは作業する人の腕にかかります。やってみようと思う方は,改造の楽しみと“いじり壊し”の危険性はいつもワンセットだということを覚悟して下さい。できることなら,使わなくなって,しまいこんであるラジコンを取り外してチャレンジするのがベストでしょう。ミニ四駆の駆動モータをラジコン制御するためにサーボの部分を改造します。

写真4 サーボの改造

サーボを分解してサーボ回路基板とポテンショメータだけを使用します。サーボ用小形モータはハンダ付けを取り外してミニ四駆の駆動モータをハンダで仮付けします。ミニ四駆のモータはモータ端子だけでリード線が無いので適当な長さのリード線をハンダ付けします。この状態で受信機側の電池ボックスを接続して,送信機のレバを操作するとモータの回転方向とスピードがコントロールできるはずです。ミニ四駆のバッテリケースは使用しません。モータの回転はポテンショメータの軸を回転させて調整します。送信機レバがニュートラルのときにモータが停止するようにポテンショメータを調整します。

何故こうなるかというと,図1で見たように,サーボ回路基板からは送信レバの操作量とポテンショメータの検出量との差に比例したモータ駆動電力が送られます。ところが,モータはポテンショメータの軸を回転させないので,回転角の検出は行われず,モータには操作レバの操作角に比例した命令が常に与えられるので,モータの回転方向とスピードがコントロールできるのです。これは,ラジコン用の“アンプ”と呼ばれる高価なモータコントロール部品と同じ働きをしていることになります。

ここで,注意しなければならないことは,ミニ四駆用の小形モータを接続するからコントロールできるので,モータラジコン用の大きなモータをつないだなら,あっという間に抵抗器が焼けたり,ICがパンクしたりしてサーボ回路基板が壊れてしまいます。接続するモータによって,回路に流れるモータ電流が異なるからです。大きなモータでは大きな電力(電流)を必要とするのでサーボ内の基板では耐えられないのです。

モータの回転をコントロールできることを確認したなら,この後の作業のためにモータのハンダをていねいに外しおきます。


ステアリングの改造

ミニ四駆をラジコン化するのですからもう一つのサーボを使用してステアリング操作のできるようにしましょう。

図2 ステアリング操作

彼等が加工に入る前,私は安直に図2(a)のようにサーボのホーンに直接フロントタイヤを取り付ければいいかなと考えていたのですが,これではタイヤとボディが接触してしまい,ステアリングが切れないという相談を受けました。さすがに綿密に作られているキットだけあって中途半端な改造は許してもらえないようです。

ここで,田宮模型の工作シリーズで市販されているステアリングキットを取り付けて図(b)のように本格的なステアリングにしてみるよう提案したところ,苦戦の結果問題が解決し,ステアリング操作ができるようになりました。ここで使用したステアリングキットのように,てこや棒状の部材を連接して動きをつくり出すメカニズムをリンクと呼びます。


シャーシの改造

ワイルドミニ四駆のボディが大き目とはいえ,シャーシにはモータとギヤ部分と乾電池を搭載する以外に無駄なスペースはなく,この中に受信機とサーボとバッテリを組み込むのは,なかなか難しい工作といえます。初めのうちはバッテリや受信機を屋根の上や外部に取り付ける等の案もありましたが,加工が進むにつれて,だんだんと車体の寸法内に納めようという意気込みが高まり,シャーシの大部分を取り除いたり,アルミ板で補強する等の工夫の末,次のようにきれいに格納されました。

写真5 シャーシ内部の部品配列

写真6 シャシー下部

写真5はシャーシ内側の部品配置で前輪側(写真右側)のシャーシをアルミ材で補強しているのが解ります。写真6はシャーシを下から見たもので,写真左側にステアリング部分が見えます。モータの回転を調整するためのポテンショメータの軸を外部から調整できるようにシャーシの下面に出しておくとすっきりとまとまります。前輪にステアリングを組み込んだので,フロントタイヤは駆動軸にはなりません。


完成!ラジコンミニ四駆

このように簡単に紹介してしまうと,いかにも何事も無く短時間で完成してしまうように思われるかも知れません。パチンパチンと組合わせて完成できるようにはなっていないし,もともと無理な工作を強いているのですから短い時間ではできないことは明らかです。適当な案が出ずに考え込んでいる時間や,失敗にふさぎ込んでしまう時間がどれほど多くあったかは紹介できませんでした。試行錯誤という四文字熟語はこのような工作のためにあるようなものです。最後の仕上げとして,モータ,受信機,バッテリ,サーボ,アンテナなどの配線を簡潔にまとめないとショートや誤動作の原因となります。

また受信機のアンテナ線を切断して短くしたり,ぐるぐると巻いたままにしておくと受信に悪影響がでます。チューブに通して伸ばしたり,それができないときにはボール紙などを芯にして巻くようにします。


発進!ラジコンミニ四駆

送信機とサーボの調整をして操作レバを倒すと,“ウィ〜ン”という軽快な音を立てて,ミニ四駆が自由自在に走り回ります。小型のラジコンカーも数多く市販されていますが,それらと比べても劣ることのない立派な走りっぷりを披露してくれました。

この工作は,模型の改造といっても外形となるボディを除いては,ほとんどがオリジナルの工作といえます。

初めにお断りしたように,私はアドバイザーとして口を出すだけですから,実際に工作にあたった諸君に感想や苦心談を聞かせてもらいましょう。「顔写真を載せるよ」と言ったら断わられたので,彼等の作品を載せておきます。

石井君の工作日記

 

「ラジコンならステアリング」と決めていたので,どうしてもステアリングで動かしたかった。シャーシの前輪部を切断しアルミ板で改造しました。サーボをアルミ板ではさみ,後輪と前輪の高さを合わせました。スピードコントロールはいろいろと考えた結果,サーボを分解してポテンショメータとプロポで調節することで解決しました。ボディの中に部品を納めるのに予想以上の苦労をして,受信機を外へ出しましたが違和感もなく,上出来だと思います。(石井 聡訓)


鶴田君の工作日記

僕にとって初めてのラジコン作りは苦労の連続でした。例をあげるとステアリングをどう付けるかという問題は,シャーシを半分に切断し前部をアルミ板で補強することで解決しました。また,ボディが小さく全てのパーツをボディの中に納めることが難しく,これはバッテリーを荷台に出して荷物に見せることで解決しました。同じような事に挑戦しようと思う人は大き目のボディを使用するといいと思います。(鶴田 大樹)


高橋君の工作日記

この記事をまとめ終わった頃,高橋君の改造工作も完成したので苦心談を聞かせてもらいました。

この工作でとても苦労したことは,プラモデルをラジコンに改造した経験もなく,使う部品もどのような動きをするのか全く解らなかった点です。中でも一番苦労した事は,前輪と後輪の高さをあわせることで,これはシャシーを切取ったり,ギヤボックスを取付けるナットの数を調整したりして解決しました。しかし,これらをはじめとして,いろいろな疑問はひとりで解決したばかりでなく,先生や友達の助言がなければ造り上げることができなかったと思います。(高橋 哲也)


工作はアイデアとガッツだ

今回の改造工作には次のものを使用しました。全て家庭で用意できるものです。

●ベース車:田宮模型ワイルドミニ四駆,他 

●ラジコンプロポ:フタバ,サンワ(2チャンネル)

●ステアリングセット:田宮模型工作シリーズ

●針金,アルミ板,板金用工具,配線用工具,接着剤 他

ベースとしたプラモデルは精巧に作られているので,勝手な部品を組込もうとしてもなかなか難しいと思います。ここには紹介できませんでしたが,彼等の仲間の山田君は,上に紹介した工作で使用したものと同じ縮尺の乗用車のプラモデルを改造しています。ボディの外観を壊さないようにと苦戦しています。

今回の工作は,使う部分と使えない部分をはっきりとさせて,使えない部分は思いきって切取ってしまうという大胆さと,いろいろな失敗と工夫を重ねながらアイデアを練っていく根気強さ,そして,「絶対に完成させる」というガッツが成功の秘訣といえるでしょう。


改造はあくまでも個人の責任で行ってください。(~~;

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