「校長ブログ」 No.111(2017年12月7日)

2017.12.07

山田うどん見学記

埼玉県を中心に関東一円に事業展開している通称“ダウドン”こと山田うどん(山田食品産業(株))。その食材を一手に製造管理する入間工場を見学する研修会(主催:東京私学教育研究所)の案内が届きました。私が通っていた高校には、なぜか学食に山田うどんが入っていて、弁当では足りない時にはよくきつねうどんを食べたものです。懐かしさもあって参加してきました(12月1日)。

もしかすると、かかしのマークの山田うどんを知っている人は、埼玉県民を除くとそう多くはないかもしれません。同じロードサイドビジネスでも、他のファミレスチェーンとはちょっと異なる立地に店舗があるからです。このあたりでは西武新宿線小平駅から南に1キロばかり離れた青梅街道沿いにある小平仲町店が一番近いお店だと思いますが、駐車場はそれなりに広いけれど、正直言って他のファミレスと比べてあまり目立つ存在ではありません。この店舗に限らず、どこも同じような場所で、同じような地味さで、1都6県に200店舗近くが展開されているのです。

そんな山田うどんですが、熱烈に愛し支持するコアなファンがたくさんいることで知られています。ももクロが山田うどんファンであることは有名で、彼女たちのライブ会場では山田うどんが出店しますし、山田うどんが一社提供している彼女たちのラジオ番組もあります。山田うどんをこよなく愛する人たちによる一種のファンブック(注)も出版されているくらいですから、失礼ながら会社の規模とはやや不釣り合いなくらいメディア露出も多く話題性が高いのです。これはどういうマーケティング戦略によるものなのか、そんな興味もありました。

見学会では会社紹介のDVD鑑賞後、さっそく工場内を案内していただきました。原料の小麦(今は国産小麦を使っているそうです)から製麺・茹麺・殺菌・急速冷却・パッケージにいたる一連の生産工程すべてが完璧に管理され、高品質で均一化された製品が作り出されています。もちろん製麺だけではなく、その他の食材(スープや惣菜、名物“パンチ”というもつ煮込みも)すべてがこのセントラルキッチンで製造され、各店舗に配送されているそうです。品質管理にはかなり力を入れておられることがわかりました。

見学終了後にはうどんの試食もさせていただきました。通常の商品は製造された翌日にお客様に提供されるのですが、試食は出来たばかりのうどんを食べさせてもらえました。さすがに打ち立て茹で立てですからひと味違うようです。

その後は営業企画部の方からの説明と質疑応答です。「山田うどんと他のファミレスとの違いは何ですか?」と質問したら、即座に「客層が違う」との答えが返ってきました。ファミレスはファミリー層や若いグループ層がメインターゲットに対して、山田うどんはタクシーやトラックの運転手さんたちが主たる客層であり、その人たちを第一に考えたメニュー構成になっているそうです。店舗が住宅地より工場や物流基地の目立つ場所に多いのも客層を考えてのことなのでしょう。山田の主力商品はセットメニューですが、普通の外食チェーンのセットは麺類1+ご飯物0.5(あるいはその逆)=1.5人前が普通ですが、山田は1+1=2人前が標準です。これは肉体労働をしている人たちの胃袋に見合う量であることを基準に考えているからです。店舗の広さ(だいたい50席が標準)に比べて駐車場が広めであるのも、トラックが駐車しやすいように考えているからです。

最近、讃岐うどん系チェーンのロードサイド出店が目立つようになっていますが、そことも客層が被らないのだそうです。そもそも山田うどんは純粋なうどん屋とはあまり認識されていない。お客様には「うどんもついてる定食屋」と思われているから、うどんチェーンとは棲み分けができている、という言い方をされ、なるほどと思った次第。そんな山田うどんの一番のライバルは、広い駐車場を持つコンビニだというのもうなずけました。

山田うどんは埼玉の一中小企業であり、大資本をバックに持つ大手外食産業ではありません。でも自分たちの創業以来の強みと独自のノウハウ、そして山田うどんを愛するファンを巻き込んだ独特の宣伝手法により、厳しい業界環境の中にあって独自の地歩を占めていることがわかった研修会でした。

(注)
えのきどいちろう・北尾トロ著『愛の山田うどん 廻ってくれ、俺の頭上で!!』
同著『みんなの山田うどん かかしの気持ちは目でわかる!』
(2012年、14年 いずれも河出書房新社刊)