「校長ブログ」 No.102(2017年9月7日)

2017.09.07

格差、貧困問題を考える 

2学期が始まりました。校内は16日、17日に開催されるTDU武蔵野祭に向けて、何となくそわそわと落ち着かない雰囲気です。年に一度のお祭りです。思いっ切り楽しむことも大切でしょう。そのほうが来校されるお客様にも楽しんでいただけるはずです。

しかし、社会全体に目を向けると、文化祭を楽しむどころではない、三度の食事も満足にとることができない子供たちもいます。「子供の貧困6人に1人」(子供の相対的貧困率16.3% 2012年厚労省調べ)というショッキングな報道があったのは、昨年の1月でした(日本経済新聞1618日朝刊)。「最低限の生活を営むこともできない状態」を指す絶対的貧困に対して、相対的貧困とは「年間の可処分所得が中央値(2015年の調査では427万円)の半分を下回っている状態」(つまり214万円以下)を指します。

相対的貧困は「目に見えにくい」と言われます。着ている服や持ち物からは貧しいようには見えないという意味です。しかし、こうした家庭の小学生は一般世帯に比べて家庭で野菜を食べる頻度が低かったり、逆にカップ麺を食べる頻度が高かったりという傾向が見られるそうです。満足な食事は一日一回学校給食だけという小学生もいるようで、そういう子供たちは夏休み中給食がないので2学期に登校してくると、げっそり痩せているという話も聞きます。だから、最近、そんな子供たちのために栄養価の高い食事を提供するボランティアの「こども食堂」があちこちに増えているのです。私の友人も東久留米で「こども食堂」の運営に携わっていると言っていました。子供の貧困は今や身近な社会問題なのです。

かつて「一億総中流」と言われた日本ですが、この20年の間に「格差」や「貧困」が進み、「生活が苦しい」「所得が増えない」「老後が心配」「将来を考えると結婚も子育てもできない」といった声を多く聞くようになりました。どうして「格差」が広がったのか、日本だけではなく世界的な視点でそのメカニズムを平易に解説してくれているのが、おなじみ池上彰さんの『世界から格差がなくならない本当の理由』です。フジテレビで放映された「池上彰緊急スペシャル!」という特番の内容を書籍化したものですから、文章が映像的ですし、番組の中で使われたインタビューも文字化されていて参考になります。ジャーナリストらしく物事の本質をぐっと捉えて、ある意味単純化して説明してくれるので分かりやすいのです。もちろん、本格的に格差・貧困問題を研究しようとなると、話はそう単純ではないのでしょうが、この問題のアウトラインを知る上では格好の入門書です。大方の予想を裏切ってトランプ大統領が当選した背景も納得できるでしょう。

自分の足下をしっかり見つめると同時に、社会全体にも目配りすることで、あなた自身の視野が広がり、ひいては異なる価値観に対しても関心と共感を持って接することができるようになります。格差や貧困は特殊な問題ではありません。あなたもその一員である社会全体の重大な課題として、真摯に向き合う必要があると思います。  

池上彰『世界から格差がなくならない本当の理由』(SB新書 2017年刊)